昭和十二年、初春。貧しい家庭に育った紅子は盗みに入った子爵・清瀬家の別邸で自分と瓜二つの令嬢・凛子と出会う。 凛子には兄と慕う真彦がいつも付き添っていた。真彦は別の子爵家の次男で、凛子を守るために、清瀬家に引き取られたのだ。その真彦が見間違うほど、紅子と凛子の容貌は似ていた。病弱な凛子が蝶のように飛び立ちたいと願う一方で、「生きていくためだったら光を探して飛ぶ蛾でもいい」と言う紅子。蝶と蛾、対照的な二人。
一方、清瀬家の絶対権力者、凛子の祖母・ミツが来週行われるパーティで、凛子の結婚相手を発表すると、勝手に宣言する。その上で凛子の婿に爵位を譲る、と。爵位と財産を狙い、凛子の義弟・太一、執事の藤堂の野望が燃え上がる──。
娼婦と淑女
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